アルツハイマー型認知症について
認知症患者の約60%の割合をしめると言われ、最も多い占有率の病気です。
1907年、ドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー氏が症例を発表しましたが、それ以来100年以上の月日が流れた今でも確かな原因はわかっていません。
アルツハイマー病と年齢には深い関係があるようです。
日本認知症ケア学会によりますと、65歳まででは1%未満の発症ですが、75歳では10%、85歳になると25%、実に4人に一人がアルツハイマー病になるとされています。
有力な原因説は脳の中のアミロイド「β(ベータ)タンパク原因説」です。
βタンパクとは脳細胞の活動の結果つくられてしまうゴミのようなもの。
通常は酵素によって掃除されるのですが、なんらかの原因によって酵素が減ることによってβタンパクが増加してしまいます。
(βタンパクは茶色いシミのように見えるため「老人班」と呼ばれています)
βタンパクは記憶を司る海馬から左右対称に侵しはじめます。ですので先ず記憶障害がおこります。
そして徐々に脳全体を侵します。
アルツハイマー病患者の脳は「老人はん」が溜まり空洞が多くなると脳が萎縮した状態になります。
健康な人の脳の重さが約1,400グラムですがアルツハイマー病患者の脳は800~900グラムと萎縮します。
但し、老人班があり萎縮した脳でも発病しない症例も数多くあり更なる研究が待たれます。
アルツハイマー病の進行 流れ
多くの場合、60代から70代に発症するアルツハイマー病ですが、脳の中では40代から原因物質が作られはじめています。
発症前
発症の約20年前から老人班が溜まりはじめます。
ですのでいつから発症したのかがはっきり解らず、なだらかに進行します。
軽度
海馬(記憶をつかさどる部位)に左右対称に老人班が溜まり記憶障害をおこします。
初期は新しい事柄の記憶ができず、ゆっくりと「もの忘れ」からはじまります。
老化と間違えやすい時期で発見が難しいです。
しかし、大事な約束を忘れてしまったり、物忘れに対しての自覚が初めはあったものの段々と自覚がなくなり探し物が増えます。
そして無くしものをすると「盗まれた」など混乱すこともありますが、住み慣れた環境下では日常生活に大きな支障はありません。
こうした時期は個人差はありますが、2~3年または5~6年とゆっくり進行します。
やがて時間が解らなくなったり自発性が低下します。
中度~重度
やがて脳のあちらこちらに溝(隙間)ができ、脳全体の大きさも萎縮していきます。
(この状態でも発病しない人も沢山います。老人班、脳の萎縮は正常な人でもおこる老化現象ともとらえられています)
言語の障害がおこると様々な混乱が生じます。
やがて古い記憶もなくなり場所がわからなくなって迷子になったり、幼い頃に住んでいた家に帰りたがったりします。
この時期になると周辺症状と言われるような「暴言・暴力」「徘徊」「幻覚」「妄想」などが見られるようになります。
アルツハイマー病患者は自分が病気であるという自覚がなく、人格が変わる傾向にあります。
介護者にとっては一番辛い時期になります。
ただし集団活動には馴染みやすいため、デイサービスなどへの参加がしやすいという特徴もあります。
終末期
脳の萎縮がすすみ、この頃は起きて生活ができず寝たきりになります。
統計的には発病からこの状態までに8年といわれますが個人差があります。
やがて生命活動が維持できなくなります。
進行を遅らせることができます
記憶をつかさどる海馬細胞を活性化させ最大で10ヶ月進行を遅らせることができるアリセプト(塩酸ドネペジル)という薬が開発されています。